ほめて教えるトレーニング
わんちゃんのしつけやトレーニング方法は、一言で表すならば 「ほめてしつける」 を基本方針としています。
専門家っぽく表現すると 「陽性強化を基本としたトレーニング」 。学術的な響きは格好いいのですが、何を言ってるのか良く分かりませんね(笑)。
ここ10年〜15年くらいの間に、主流となってきた考え方ですので、耳にしたことのある方も多いかと思います。
ただ一口に「ほめてしつける」と言っても、考え方には人によって幅がありますし、また、言葉だけが一人歩きしてしまい、誤解をなさっている方も多い様に感じますので、私なりの解釈や考え方を、説明してみたいと思います。
「いたずらしてるのに、ほめるとか無理!意味がわかんない!」と思う方も稀にいるみたいです(恥ずかしながら私も最初聞いた時そう思いました・・・)。
また、多くの方が誤解しているのが、「ほめてしつける=いつ如何なる時も絶対に叱ってはいけない」 と、勝手に意味を読み違えてしまっていることです。
そういった方は「ほめてしつける」と聞いた途端に、残念なことにある種の拒絶反応(人によっては激烈な(笑))を示されるようです^^;
叱ることでしか出来ないしつけも、中にはきっとあることでしょう。取合えずは「可能な限り叱らずにしつける」と読み替えて頂いても良いかと思います。
「叱るしつけ=して欲しくないことを教えるしつけ」 ↔ 「ほめるしつけ=して欲しいことを教えるしつけ」、と言えばイメージしやすいでしょうか?
「叱ったらなおるのか。本当に叱る必要があるのか。叱る以外に方法はないのか。まずは考えてみませんか?」 という事なのです。
「叱らずにすむ方法はないか?そして出来ることならば、ほめてあげられる方法はないか?」、常に念頭におき模索していくスタイルとも言えます。
(「叱ることの難しさとリスク」」については、また機会をみつけて説明します。)
上記の説明だけでは流石に分かりづらいと思いますので、アプローチの仕方の例を挙げてみましょう (※あくまで例ですので、単純化・簡略化しています)。
『靴やスリッパなどをかじられて困る』
→ かじって欲しくない物は、わんちゃんの手の(口の)届かない所に片付け、かじる機会そのものをなくします。
いたずらを 、「できない・させない」 状況にしてあげる事で、【叱る機会をなくす工夫】 をしてみます。
→ わんちゃん専用のおもちゃを与える
ここで重要なのは、ただ与えっぱなしにするのではなく、「おもちゃで遊んでいたらほめる!」 こと。ほめる事で 「してほしいこと」 を教えてあげます。
同じ「かじる」と言う行為に対して、ここでは 【叱る対象の行動を、褒める対象の行動へと、置き換える工夫】 をしています。
わんちゃんによって喜ぶおもちゃは様々ですので、色々なおもちゃを試してみて、お気に入りのおもちゃを用意してあげる、と言った工夫も必要ですね^^b
ま、これで解決するのなら苦労しませんよね(笑)。
たいていは、棚や椅子の足などと言った、 「片付けられない、かじってほしく無いもの」 をかじるんですよね^^;
そういった場合にも、フェンスで囲う ・ "ビターアップル"を塗ってみるなど、【させない・できない工夫】 【叱らずにやめさせる工夫】 を先ずはトコトン考えます。
考え得るあらゆる手段を試しても一切効果がなく、またそれでもどうしてもやめさせたい・・・そのような場合に、初めて叱ることを選択肢として考慮にいれます。
『散歩となると大はしゃぎ。出掛けるまでが一苦労』
散歩の気配を感じた途端に、大喜びではしゃぎまわるワンちゃんは珍しくないでしょう。
見ている分にはこちらも楽しくなるくらいに可愛いのですが、散歩に連れ出す人は大変です。
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飛びつかれて→「トビツカナイ!」
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首輪を付けたくて→「ジットシテナサイ!」
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玄関を爪で引っ掻き→「ヤメナサイ!」
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扉が少しでも開いたら猛ダッシュ→「ヒッパッラナイ!」
ハイテンションなわんちゃんですと、こんな散歩前の儀式が繰り広げられる事もあるようです・・・^^;
何故こうなってしまうのでしょうか?主な理由は二つ考えられます。
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犬にとっては自然な行為である
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叱る(怒鳴る)ばかりでどうして欲しいのかを教えていない
散歩が楽しみなあまり、その喜びを全身で表現して、つい飛びついてしまう。
散歩が楽しみなあまり、いても立ってもいられず、じっとしていられない。
散歩が楽しみなあまり、早く外に出たくてしょうがない。
これに加えて、飼主さんが怒鳴ったりしようものなら、益々テンションがあがるばかりで、叱られているなんてこれっぽっちも思いもしません・・・。
この様なケースでは、「 "やめてほしいこと" と同時にできない "してほしいこと" 」 を教えてあげることで、「叱るから褒めるへ」を目指します。
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散歩の前には、まずは玄関で「おすわり」
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首輪を付け終わるまで、「おすわり」のまま「まて」
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首輪を付け終わったら「ふせ」
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玄関の扉を開け、飼主さんが外に出るまで、「ふせ」のまま「まて」
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飼主さんが「おいで」で呼ぶ
夫々のコマンドを覚えていることが前提になりますが、叱っていた四つの行為=「してほしくないこと」を、コマンドによる「してほしいこと」で打ち消しています。
一連の流れを上記のように出来れば、首輪とリードを付けて外にでる、たったこれだけの間に、四回も叱っていたのを、五回も褒めてあげられることに!
同じ散歩に行く前の儀式。あなたなら、そしてワンちゃんなら、どちらが良いですか?
「してほしくないこと」に目くじらを立てずに、「では、どうして欲しいのか?」を考える。これも「ほめてしつける」の大事な考え方の一つです。
少しは 「ほめてしつける」 のイメージが掴み易くなりましたでしょうか?
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