叱るしつけの難しさとリスク
ここで言う「叱るしつけ」とは、肉体的・精神的な痛み・恐怖を与える行為全般を指し、「犬にとって嫌な事を起こすことで躾を行おうとする行為」を意味します。
叩く・蹴る・殴る(真似も含みます)・力任せに言う事を聞かせる…などのスパルタ式は言うに及ばず、ハーフチョーク首輪・フルチョークチェーンを用いたショックを与えるトレーニング、そして「天罰方式」と言われる「音で驚かせる行為」、これらも含まれます。
私も「罰を与えるトレーニング」は行います。ただしそれは上記と異なり、「犬にとって楽しい事が無くなる」と言う罰であり、恐怖や痛みは与えません。
何があっても絶対に「叱るしつけ」をしないとは言いません(幸い今のところ用いたことはありませんが…^^)。
他に選択肢がなく且つ効果が見込まれる…と確信した場合には、用いる可能性はありますが、言わば最後の手段です。
『叱るしつけの難しさ』
「叱る=犬にとって嫌な事を起こすしつけ」が成功するためには、望ましくない行為をした…
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直後に(1秒以内に。長くても2秒以内に。)
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必ず(100%の確率で)
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適切な強さの罰を与える(強過ぎても弱過ぎてもダメ)
…これら3つの条件が全て満たされないと、効果がないことが分かっています。
特に三番目の「適切な強さ」の見極めは、プロでも中々に難易度の高いものです。つまり、とっても難しいです(笑)。
『叱るしつけのリスク』
仮に三つの条件すべてを満たしたとしても…
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攻撃性が高まる
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回避行動をみせる(=人を避ける)
- 無気力化する
…と言ったリスクがあります。
一番目は飼い主さんにとって恐怖・脅威であり、いつ何時咬みつかれるか分からないようでは、とても安心して一緒に暮らせません。また、その攻撃が飼い主さんや家族に向かえばまだ良いのですが、よその人・犬に向けられることが往々にしてあり、極めて迷惑かつ危険です!!
二番目は危険が無いだけマシですが、一緒に暮らしていること自体が、お互いにとって何ら楽しみ・喜びのない状態です。
三番目は飼い主さんにとっては楽かも知れませんが、犬にとっては生の喜びが全くない、非常に不幸な最悪の環境です。
特に、例えば「歯磨きを嫌がる」・「足拭きを嫌がる」と言った様な、「嫌な事を無くそうとしている行動」に用いるのは、犬にとって極度のストレスを与え、より強くこれらの反応を誘発するので、絶対にオススメできません。
『本当に"しつけ"なのでしょうか?』
私が知るかぎりでは、「叱ってしつけている(つもりの)」多くの飼い主さんは…
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しつけをしている感に酔っている(効果は出ていない or 悪化させている場合が多い)
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人目を気にして「しっかり躾に取り組んでいます」感を演出している(=目的は躾ではなく文句や苦情を言われる事の回避)
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思い通りに行かない怒りをぶつけている(=単なるヒステリー)
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支配欲求を満たしている
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しつけの名を借りて腹いせをしている
…だけな様に思えて仕方がありません。これは「しつけ」ではなく「いじめ」「虐待」「DV」なのではないでしょうか? 犯罪行為です。
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